言葉にブランドを宿すには──答えは「インナーブランディング」

ブランドを言葉で表現したい。そう考えたとき、多くの企業は「らしい言葉」を探し始めます。
しかし本当に大切なのは、“何をどう語るか”ではなく、“なぜその言葉が自然と出てくるのか”という構造です。表面的なブランディングではなく、社員の言葉に本質が宿る組織には、ある共通点があります。それが「インナーブランディング」です。
本記事では、社員の言葉にブランドが自然と表れる仕組みについて解説します。
「ブランドらしい言葉」をつくろうとする前に考えるべきこと
ブランドらしさを言葉で表すために、社員に対して「こう言ってほしい」と演出するケースもあります。ですが、それが本当に効果的なのか、立ち止まって考える必要があります。
以下で、その理由を詳しく見ていきましょう。
社員に「これを言って」と頼むことの落とし穴
たとえ魅力的な言葉であっても、誰かに言わされていると受け手に伝われば、それは一気に信用を失います。社員が自発的に語る言葉だからこそ、そこにブランドの“本質”が宿るのです。
上からの指示で整えられた言葉は、どれだけ美しくても“本物”にはなりません。
言葉に力を持たせる鍵は「インナーブランディング」
社員の言葉にブランドらしさを宿らせるには、表現そのものを整えるのではなく、「整った状態を生み出す環境」を整えることが必要です。インナーブランディングとはまさに、その内側からにじみ出る力を育てる取り組みです。
アウターではなく「インナー」が言葉を生む
多くの企業がSNSや広告を通じて“らしさ”を見せようとしますが、そこに内実が伴わなければ、実際に接点を持ったときの落差が不信感につながります。表面の印象と実際の体験にズレがない企業は、必ず内側にしっかりとした理念の共有があるのです。
ディズニーやスターバックスに学ぶ内側からの統一感
言葉でつくるブランドではなく、行動に表れるブランドを実現している企業には、共通する組織文化があります。
それを体現している好例が、ディズニーランドやスターバックスです。
理念が自然に行動へと現れる仕組み
ディズニーでは、キャストが“夢の国”を演出するために、自ら工夫した言葉や行動を取ります。
清掃スタッフが「星のかけらを集めている」と語る逸話は有名ですが、これはマニュアルに従ったものではなく、理念に根ざした“自分なりの表現”です。ブランドが浸透していれば、言葉は教えなくても揃うのです。
社員インタビューにこそブランドが現れる
採用活動や社外向け広報のために行う社員インタビューは、ブランドの“にじみ出し方”を確かめる場でもあります。
ここで語られる内容が理念と一致していれば、それは本物のブランド力がある証です。
ブランドが根づいていれば、言葉は自然と整う
理念が日常業務にまで浸透していれば、社員がやりがいや仕事内容を語るだけで、その奥にブランドの軸が感じられます。たとえ言葉の表現が社員ごとに異なっても、伝わってくる“方向性”は一つにまとまっていくのです。
一人ひとりの言葉がブランドをつくる
社員に理念やビジョンをどう捉えているかを尋ねると、それぞれの言葉でブランドを語ってくれます。その多様性こそが、ブランドの深みとなって表れます。
ビジョンに対する多様な「自分なりの答え」
たとえば「誤解なく伝わる世の中を目指す」というビジョンがあったとします。ある社員は「人間関係のすれ違いを減らしたい」と語り、別の社員は「商品の魅力をちゃんと届けたい」と話すでしょう。
表現は違っても、目指す方向が一致していれば、すべてがブランドの一部になります。
ブランドは“言わせる”のではなく“にじみ出る”もの
最終的に、ブランディングは言葉づかいや表現技法ではなく、土台となる理念の浸透にかかっています。社員がブランドを語れるかどうかは、その理念と日常が結びついているかどうかにかかっているのです。
ブランドは、理念の上に言葉が積み上がる構造
ブランドを支えるのは「整えられた言葉」ではなく、「共通の価値観に基づいた自然な発信」です。
理念が組織に根づいていれば、どの社員の言葉にも、同じ方向の信念が流れます。表現は個性があっていい。大事なのは、根っこが同じであることです。
整えるべきは「理念」──言葉はその結果にすぎない
ブランドを言葉で表現したいときに最初にするべきは、言葉を選ぶことではありません。組織として「何を大切にしているか」「どんな存在でありたいか」を明確にすることです。
社員一人ひとりの言葉がばらつかず自然に整ってくるのは、インナーブランディングの成果です。
“言葉で整える”のではなく、“整った状態から言葉が出る”。それが、これからの時代のブランディングのあり方ではないでしょうか。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67fd11c56bb1fa8872d27fb5

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役