ブランドが崩れる言葉選びのミス:型にはまりすぎる危険性

企業のブランディングにおいて、文章は重要な役割を果たします。しかし、正しい文章のルールや型にこだわりすぎることで、かえってブランドが薄れてしまうことがあります。
特にライターが陥りがちな「言葉選びのミス」について考えてみましょう。
型にはまりすぎることの危険性
結論から言うと、良くも悪くも「型にはまるな」ということが重要です。特にライターの方に注意していただきたいポイントがあります。
デスマス調の過度な意識
ライティングにおいて、「です・ます」が続くことを避けるべきだと教えられることがあります。特にSEOライターの方は、この点を強く意識している傾向があります。
確かに「〜です」「〜ます」が続くと稚拙に見えたり、単調な印象を与えたりすることがあります。しかし、これを過度に意識して無理に語尾を変えようとすると、逆に不自然な文章になってしまうのです。
無理やり語尾を変えることで、本来伝えたい内容がずれてしまったり、変な言い回しになったりするケースが多く見られます。
文章ルールとブランド表現のバランス
ライターは文章のルールや正しい書き方に重きを置く傾向があります。もちろん、これは重要なスキルです。しかし、ブランドを表現する際に最も大切なのは「伝えたいこと」であって、厳格なルールではありません。
文章の正しさとブランドの表現力、どちらを優先すべきかと言えば、明らかに後者です。
SEOライティングとブランディングの違い
SEOライティングとブランディングを目的とした文章では、目的が根本的に異なります。
PREP法の功罪
SEOライティングでは、PREP法(結論→理由→具体例→結論)という構成がよく推奨されます。この手法は確かに読み手にとって分かりやすく、情報を効率的に伝えることができます。
しかし、社員インタビューやブランディング記事にこの型をそのまま適用すると、文章が整いすぎてしまい、ブランドらしさが薄れてしまう危険性があります。
スムーズに読めることは良いことですが、「良い意味での引っかかり」まで失ってしまうと、読み手の印象に残らない文章になってしまいます。
読み手の意識の違い
SEOライティング(特に「〇〇とは」系の記事)の読み手は、答えをすぐに知りたがっている状態です。長い文章を読みたくないため、簡潔で分かりやすい構成が求められます。
一方、社員インタビューや社長挨拶のページにたどり着く読み手は、すでにその企業に強い興味を持っています。「早く答えを知りたい」というよりも、「その内容をじっくり読みたい」という気持ちで訪れているのです。
ブランディングにおける主観性の重要性
SEOライティングでは客観的な書き方が重視されがちですが、ブランドを表現する場合は主観的なアプローチの方が効果的です。客観的すぎる文章では、その企業ならではの個性や価値観が伝わりにくくなってしまいます。
ブランドを軸にした言葉選び
効果的なブランディング文章を書くためには、ライターとしてのスキルとブランド表現のバランスを取ることが重要です。
3:7の法則
ライターとしてのルールや技術は全体の3〜4割程度に留め、残りの6〜7割はブランドを意識して書くことをお勧めします。
文章の基本的な使い方や扱い方を考慮しつつも、ブランドの表現を最優先に置くことで、その企業らしさが自然と言葉に現れてきます。
ブランドが先、技術が後
多くの人が陥りがちなのは、「ライティング技術の上にブランドを乗せる」という考え方です。しかし、これでは技術的な要素がブランドを消してしまう可能性があります。
正しいアプローチは、「ブランドを前提に置き、それをライティング技術で効果的に表現する」ことです。
具体的な言葉選びの例
ブランドによって言葉選びがどう変わるかを、具体例で見てみましょう。
医療機関での呼称選択
医療系の企業で記事を書く場合、患者をどう呼ぶかという問題があります。
- 患者さん:親しみやすく、寄り添う姿勢を表現
- 患者様:より丁寧で、サービス業的なアプローチ
- お客様:完全にサービス業としての位置づけ
この選択は、その医療機関の理念や方針によって決まります。「患者さん目線で何よりも寄り添う」ことを掲げる機関なら「患者さん」が適切でしょうし、格式を重んじる病院なら「患者様」が相応しいかもしれません。
一般的な使い方よりもブランドの一貫性
ライターの視点が先に来ると、「一般的にはこちらが使われているから」という理由で言葉を選んでしまいがちです。しかし、ブランドを表現するのであれば、「この会社の理念はこうだから、この言葉を選ぶべきだ」という判断基準の方が重要です。
ブランドファーストの文章作り
ブランドを崩さない言葉選びのために、以下の点を意識してください。
自社で文章を書く場合
- 文章の書き方を調べる前に、自社のブランドを明確にする
- 「うちはこの言葉選びが正解」「うちはこう書くのが正解」という独自の基準を持つ
- それがその企業にとっての正解である
ライターとして書く場合
- 文章技術は3〜4割程度に留める
- ブランド表現に6〜7割の重点を置く
- 型にはまりすぎず、そのブランドならではの表現を追求する
文章のルールや技術は重要ですが、それがブランドの個性を消してしまっては本末転倒です。まずはブランドありき。その上で技術を活用することで、印象に残る効果的な文章が生まれるのです。
適切な言葉選びをするためには、ライティング技術よりもまずブランドの理解から始めましょう。それこそが、真にブランドを表現する文章への第一歩なのです。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67fd1658150b932980483395

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役