ブランディングでカッコつけは禁物:ありのままの魅力を伝える重要性

「ブランド」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?多くの人がルイ・ヴィトンやコーチなどの高級ブランドバッグを連想し、「ブランド=洗練されたかっこいいもの」というイメージを持っているのではないでしょうか。しかし、このイメージがブランディングにおいて大きな誤解を生んでいるのです。

ブランドに対する一般的な誤解

ブランディングを学ぶ前の多くの人は、ブランドといえば高級ファッションブランドを思い浮かべます。そのため、「ブランド=かっこいいもの」「ブランド=洗練されたもの」という先入観を持ってしまいがちです。

この思い込みにより、ブランディングに取り組む際に、無理にかっこつけた表現や洗練された言葉を使おうとしてしまいます。例えば、「オシャレ」という言葉を「洗練された」に変えたり、普段使わないような格好つけた単語を選んだりするのです。

しかし、重要なのは「ブランド=カッコつけたもの」ではないということです。企業によっては、カッコつけないことがブランドの軸になっている場合もあります。むしろ、飾らない姿勢や親しみやすさこそが、その企業の強みである場合も多いのです。

キャッチコピーでよくある間違い

キャッチコピーを作る際によく見られるのが、体言止めで言い切る格好つけた表現への偏重です。どんな業種でも、おしゃれで洗練されたキャッチコピーを作ろうとしがちですが、これは必ずしもブランディングにとって重要ではありません。

ブランディングにおいて本当に大切なのは、その企業にいる人たちの内側から自然に出てくるものです。外から見た時の「おしゃれ」や「洗練」を追求するのではなく、ありのままの姿を伝えることが重要なのです。

ブランドは外から見たイメージですが、そのイメージと実態が乖離していると、違和感やギャップが生まれてしまいます。

具体例:職人企業のブランディング

例えば、汗水流して昔ながらの職人のように新入社員を指導し、昭和的な温かみのある方法でお客様と接している企業があるとします。お客様からお茶やお菓子をいただいたり、時には家に上がって雑談をしたりと、地域密着の関係性を築いている会社です。

このような企業が「私たちが未来を作る」といった格好つけたキャッチコピーを使ったらどうでしょうか。これまでのお客様は「あの会社はどうしたのか」と困惑してしまうでしょう。

職人的な企業であれば、「私たちは汗水流して働く昔ながらの職人だ」という、そのままの表現で十分なのです。これは決して洗練されたキャッチコピーではありませんが、その企業の本質を正確に表現しています。

地域のお客様から見ても、「確かにあそこは最近の軽薄な会社とは違う、本物の職人さんたちの集まりだ」と納得してもらえるでしょう。これこそが真のブランドなのです。

現在を言語化することの重要性

ビジョン・ミッション・バリューを策定する際、特にビジョンでは「10年後にこうなります」という未来志向の表現が使われることがあります。未来に向けた目標設定は重要ですが、現在の姿を言語化できていないと、現実的な未来の姿も描けません。

昔ながらの職人企業が「10年後には職人の働き方を一新します」と言っても、現在の働き方との整合性が取れません。むしろ、「10年後に職人はかっこいいという価値観を広める」といった、現在の強みを活かした未来像の方が説得力があります。

現在の職人の働き方に誇りを持ち、それが本来はかっこいいものであることを世の中に広めていく。このようなビジョンであれば、現在の姿と未来の目標が自然につながります。

実践的なアプローチ

ブランディングの第一歩は、現在の自社の姿を盛りすぎずに、ありのままに言語化することです。「今、私たちはどうありたいのか」「今、私たちはどのように行動しているのか」を正直に表現することから始めましょう。

現在の姿を正確に把握できれば、より現実的で説得力のある未来像をビジョンとして掲げることができます。現在の強みや特徴を活かしながら、それをどのように発展させていくかを考えることで、一貫性のあるブランドストーリーが生まれます。

自然体こそが最強のブランディング

ブランディングにおいて最も重要なのは、カッコつけることではありません。企業の本質的な価値や魅力を、ありのままに伝えることです。

自社のビジョンを考える際には、以下のポイントを意識してください:

  • 高級ブランドのイメージに惑わされない
  • 無理に洗練された表現を使おうとしない
  • 現在の自社の姿を正直に言語化する
  • 現在の強みを活かした未来像を描く
  • 実態とイメージの一貫性を保つ

真のブランディングは、企業の内側から自然に生まれるものです。外から見た「かっこよさ」を追求するのではなく、その企業ならではの価値や魅力を、飾らずに伝えることで、印象に残る強いブランドが構築できるのです。

自社の見せ方を考える際には、「カッコつけすぎは良くない」ということを思い出し、ありのままの魅力を大切にしてください。それこそが、長期的に愛され続けるブランドの基盤となるのです。


本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。

音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。

 https://stand.fm/episodes/67fd1a58150b9329804833e1

名城 政也/Masaya Nashiro

琴線に触れる株式会社 代表取締役