インタビューだけではブランドは語れない──発信前に必要な“土台づくり”の話

社員インタビューを通じてブランドを表現したい。そう考える企業は少なくありません。しかし、「インタビューすればブランドが伝わる」と考えているなら、それは大きな誤解です。ブランドを言語化し、社内外に伝えるには、まず明確な“土台”が必要です。今回は、インタビューを効果的に活用するために欠かせない準備と視点について解説します。
インタビューは“答え”ではなく“材料”にすぎない
社員の声を集めればブランドが浮かび上がる──そう期待してインタビューを始めても、会社の軸がなければ、出てくる言葉はバラバラになってしまいます。
インタビューで語られる内容は、その人が日々感じていることや体験に基づくものであり、企業として「どう見られたいか」「どうありたいか」が共有されていなければ、発言は当然まとまりません。特に理念や価値観の共有が不十分な組織では、逆に“ブランドのブレ”が可視化されてしまうリスクすらあるのです。
ブランドを伝えるには“理念という土台”が不可欠
インタビューの前に確認すべきなのは、その企業がどんな価値観を持ち、どのように社会と関わっていきたいと考えているかです。それがブランドの核となります。
外の印象と内の意図はズレることがある
企業が「こう見られたい」と思っていても、顧客や社員の視点からはまったく違う印象を持たれていることがあります。このズレを放置したままインタビュー記事を発信すると、「違和感」や「嘘っぽさ」が生まれ、むしろブランドを損なう結果にもなりかねません。
記事制作前に“すり合わせ”が必要な理由
インタビューで得た素材をそのまま発信する前に、ライターと企業の間で「ブランドの方向性はこれで合っているか?」という確認作業が必要です。
外部ライターには“仮説”しか立てられない
ライターが何人かの社員に話を聞いたうえで、「この会社はこういう印象を受けました」として記事を書いても、それが企業として本当に伝えたいこととズレていることがあります。このズレは、事前に理念やビジョンを明文化し、すり合わせることでしか防げません。
土台なきブランディングは“空中戦”になる
ブランドを伝えるには、社内で明文化された理念が共有され、それが日々の言葉や行動ににじみ出ている必要があります。理念がなければ、ブランディングはただの見せかけに終わってしまいます。
ホームページや採用記事、社員インタビューを整えればブランドができる──そう考える企業もありますが、理念が社内に浸透していなければ、見た目だけが立派な“空虚なブランド”になってしまいます。これでは外部との接点でギャップが生まれ、信頼を損なうリスクすらあります。
ブランドに合ったインタビューの“聞き方・書き方”を
社員インタビューや採用コンテンツでは、よく“おしゃれな演出”が用いられます。Wantedlyなどのプラットフォームに見られる「元オタクの私が○○に就職した理由」などはその典型です。
その書き方、“らしい”ですか?
確かに面白いタイトルや語り口は注目されますが、それが本当に自社のブランドに合っているかは別問題です。たとえばグッチが「元オタクがグッチに就職した理由」という記事を出していたら、違和感を覚えるはずです。
一方、ユニクロのように親しみやすさを前面に出すブランドなら、そうしたタイトルも成立するかもしれません。大切なのは、「その書き方が、ブランドと一致しているかどうか」です。
「らしい文章」は、土台からしか生まれない
ブランドに沿った文章やインタビューは、表現テクニックではなく、事前に共有された“軸”から生まれます。だからこそ、発信前には必ずその軸をすり合わせておくべきです。
「御社のブランドとして、どう見せたいかを教えてください」「理念は社内に浸透していますか?」。このような一言を伝えられるライターは、ただの記事作成者ではなく、信頼できるパートナーとして重宝されるはずです。
インタビューを活かすには、理念の土台が必要
社員インタビューはブランドを伝える有効な手段ですが、そこに“理念”という土台がなければ、ただのバラバラな声の集まりになってしまいます。ブランドとは、整った言葉で見せるものではなく、共通の価値観が自然とにじみ出るものです。
まずは企業として「どう見られたいか」「どうありたいか」を明文化し、それを社内に浸透させること。そのうえでインタビューを行えば、自然と“らしい言葉”が集まり、ブランドが言葉として形になっていくはずです。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/68007ecb16e437e4517ddff0

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役