尖った言葉は本当に必要?自然に際立つブランドの作り方

企業のブランディングにおいて、インパクトのある「尖った言葉」を使って差別化を図ろうとする企業が多く見られます。しかし、本当に尖った表現が必要なのでしょうか。
強烈なキャッチコピーや攻撃的な表現でなくても、企業の魅力を効果的に伝える方法について考えてみましょう。
尖った言葉は必須ではない
結論から言うと、ブランディングにおいて尖った言葉は全く必要ありません。確かに、極端に尖った表現で企業イメージを強烈に印象づける手法もありますし、それが効果的な場合もあります。
尖った表現が有効なケース
例えば、会社のメンバー全員がロックバンド出身で構成されているような企業があるとします。その場合、「ロックな会社」として反骨心を前面に押し出し、「こんな当たり前のことばかり書いてんじゃねー」といった攻撃的なメッセージでブランディングを行うことも一つの戦略として成り立つでしょう。
実際に、そうした尖ったサイトやキャッチコピーを持つホームページは存在し、それなりの効果を上げている例もあります。しかし、だからといって全ての企業がそうしなければならないわけではありません。
無理に尖らせる必要はない
重要なのは、尖った言葉でブランドを作るのではなく、ブランドがあってそれに基づいて表現方法を決定することです。つまり、「尖らせるか、尖らせないか」は最初に決めることではなく、企業の本質を理解した後に判断すべき事項なのです。
ブランドが先、表現は後
ブランディングにおいて最も重要なのは、企業の本質的な価値や方向性を明確にすることです。
個人の背景と企業ブランドは別物
例えば、社長が元パンクバンドのメンバーだったとしても、それが必ずしも企業のブランドに反映されるべきとは限りません。それはあくまで社長個人の背景やストーリーであり、会社全体のブランドとは区別して考える必要があります。
ただし、企業の理念として「どんなことにも反骨心を持つ」という行動指針を掲げているのであれば、それに沿って尖った表現を採用することも適切かもしれません。
企業ビジョンに基づいた判断
筆者の会社を例にとると、「伝えたいことが、誤解なく伝わる世の中を目指す」というビジョンを掲げています。これは社長の音楽的背景とは全く関係なく、企業として目指すべき方向性を示したものです。
このように、社長の個人的な背景ではなく、「企業としてどうありたいか」「どのように見られたいか」「どういう会社になっていきたいか」を明確にしてから、表現方法を決定することが重要です。
自然に生まれる企業の個性
企業の魅力や特徴は、無理に作り出すものではありません。適切にヒアリングし、企業の本質を掘り下げていけば、自然と個性的な内容が浮かび上がってきます。
気づかない魅力の発見
多くの中小企業が「うちは別にこれをやっているだけで、特別な魅力や特徴なんてない」と考えがちです。しかし、それは大きな誤解です。もし本当に魅力がなければ、その企業は既に市場から淘汰されているはずです。
顧客に選ばれ、人材が集まり、組織として機能している以上、必ず何らかの魅力や特徴が存在します。問題は、当事者がそれに気づいていないことです。
外部の視点による発見
自社のことは当事者には見えにくいものです。しかし、外部からインタビューを行うと、「それってとても特別なことをしていますよ」「当たり前におっしゃっていますが、実はとても珍しいことです」という発見が多くあります。
企業の考え方やブランドを深掘りしていくと、その企業ならではの特徴、考え方、魅力が必ず見つかります。それを適切に文章化すれば、特別に攻撃的な表現を使わなくても、自然と内容で差別化が図れるのです。
日常の中に潜む特別さ
企業の魅力は、日常の何気ない取り組みの中にも隠れています。
ランチ会の例
例えば、毎週1回社員を集めてランチ会を開催している企業があるとします。その企業では「ただご飯を食べているだけ」と思っているかもしれませんが、これは実は非常に特徴的な取り組みです。
毎週ランチ会を開催し、そこに社員も社長も一緒に参加するという文化は、多くの企業では見られない異例のことです。この事実から読み取れるのは
- 社員同士の仲が良い
- 社長との風通しが良い
- 組織ではなくチームとして機能している
- コミュニケーションを重視している
こうした要素を深掘りして言語化していけば、特別に尖った表現を使わなくても、自然と企業の個性が際立ってきます。
本質を伝える文章の力
真のブランディングは、表面的な言葉遣いではなく、企業の本質を正確に伝えることから生まれます。
USPや強みの深掘り
企業のUSP(独自の価値提案)や強み、魅力について「なぜこういうことをしているのか」を徹底的に深掘りしていけば、自然と内容は特徴的になります。無理に表現を尖らせようとしなくても、本質的な差別化要素が浮かび上がってくるのです。
ありのままの魅力を伝える
最も効果的なブランディングは、企業のありのままの考え方、ありのままの姿を正確に伝えることです。それを適切に言語化し、文章化して発信すれば、自然と企業の魅力が際立ちます。
自然体こそが最強のブランディング
ブランディングにおいて重要なのは、無理に尖った表現を作り出すことではありません。企業の本質的な価値や魅力を見つけ出し、それを正確に伝えることこそが、真の差別化につながります。
尖った言葉を使うかどうかは、企業のブランドや理念に基づいて後から決めれば良いことです。まずは企業の本当の姿を理解し、その魅力を言語化することから始めましょう。
どんな企業にも必ず独自の魅力があります。それを発見し、自然な形で表現することで、無理に攻撃的な言葉を使わなくても、十分に印象的で差別化されたブランドを構築することができるのです。
ありのままの企業の姿を丁寧に伝える。それこそが、最も強力で持続可能なブランディングの方法なのです。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
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名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役