なぜ言葉が他社と被るのか?差別化できるブランド言語のつくり方

「理念を決めたのに、他社とキャッチコピーがかぶる…」
ブランドや理念、ビジョン・ミッション・バリュー(MVV)をしっかり考えたはずなのに、いざホームページや広告で表現しようとすると「よくある言葉」しか出てこない。そんな経験はありませんか?
たとえば、
- 「世界を笑顔にしたい」
- 「隣の人を大切に」
- 「私たちはやさしさを届けます」
どれも美しい言葉ですが、どの会社でも言えそうな表現でもあります。そして、それがまさに「ブランドが曖昧なまま言葉を選んでしまっている」状態なのです。
なぜ言葉が被るのか?その原因は抽象的すぎるビジョンにある
多くの企業が「理念はある」「ブランドも考えた」と言います。しかしその実態は、「世界平和」や「社会貢献」など抽象的すぎるビジョンで止まっていることがほとんど。
たとえば「世界平和を目指す会社」というだけでは、従業員は「で、何をすればいいんですか?」
広報担当者は「何を発信すればいいんですか?」と行き詰まってしまいます。
このように、理念やビジョンが具体化されていないと、発信する言葉にも芯がなくなるのです。結果、無難でよくあるコピーに頼ることになり、他社と被ってしまいます。
解決の第一歩は「具体的な言葉」への細分化
被らない言葉、差別化できるコピーを生むには、抽象的な理念を徹底的に細分化することが必要です。
例:抽象から具体へ
- 世界平和 → 隣の人に優しく
- 隣の人に優しく → 温かい言葉をかける、声のトーンに気をつける
- 優しさとは? → 相手の話を最後まで聞く、一緒に笑う、安心できる空間をつくる
ここまで掘り下げることで、ようやくその会社にしか出せない言葉が見えてきます。
ビジョン・バリューを行動と言葉に落とし込む
たとえば、「私たちは隣の人を大切にします」と掲げる企業があった場合、言葉づかいにもそれが反映されるべきです。
- ×「〜である」「〜せよ」などの断定的・命令的な語尾
- ○「〜ですよね」「〜しませんか?」など寄り添うような表現
一方で、ビジョンが「世界環境の改善」など論理的・機能的なものであれば、
- ○「〜である」「〜を実現する」といった端的で力強い言葉もふさわしいかもしれません。
ブランドが具体化されていれば、言葉のトーンや語尾の選び方にも一貫性が生まれます。
言葉の深掘りには「○○とは?」思考が有効
差別化のための言語設計には、ライター思考の「〜とは?」を繰り返す手法が有効です。
たとえば「やさしい会社」と名乗るなら、
- やさしさとは何か?
- 誰に対してやさしいのか?
- どういう行動で“やさしさ”を伝えているのか?
- それが現場でどう表れているか?
これをツリー状に掘り下げていくことで、自社だけの行動・価値観・言葉が浮き彫りになります。
掘り下げた先にある、自社だけの言葉
どれだけ丁寧に言葉を選んでも、理念が曖昧なままではキャッチコピーは被ります。しかし逆に、理念やビジョン・行動指針を具体的に掘り下げれば、その会社だけにしか存在しない言葉が、自然と浮かび上がってきます。
たとえば、
- 「従業員が家族との時間を大切にできるように」→ 柔らかな勤務表現・挨拶文になる
- 「私たちは、目の前の人を大切にする」→ お客様だけでなく、スタッフや取引先にも一貫した言葉遣いができる
“意味を持った言葉”は、ブレません。そして、選ばれます。
キャッチコピーが被るのは、言葉の深さが足りていないから
- ブランドが曖昧だと、言葉が抽象的になり、他社と被る
- 理念やビジョンを徹底的に掘り下げ、行動・発信・言葉に落とし込むことが大切
- 「○○とは?」の深掘りを繰り返すことで、自社だけの言葉が見えてくる
同じような価値観を掲げていたとしても、自社がどう解釈して、どう伝えるかで言葉は変わります。
もし今、キャッチコピーや言葉選びで悩んでいるなら、もう一段深く、自社の思いを掘ってみてください。きっと、他の誰にも書けない言葉が見つかります。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/680cf4f52943851772be5617

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役